比嘉周作　ほろほろ写真館　　

小学生の頃。
みんなの前で、先生に叱られた、のが原因だったと思うのですが、
悔しくて泣いてしまったことがあります。

そのとき。
みんなの前で泣いたのが恥ずかしくて、
みんなの視線から逃れるように自分の席に戻ったとき、
そっと、
ハンカチを差し出してくれました。
隣の席の女子が。

今ではもう、顔も名前も忘れてしまっています。
でも、
その優しさは今でも僕の心の大切な場所に残っていて、
きっと一生、忘れることはないでしょう。

優しさとはなんだろう？
それを考えるとき、
いつもあのとき僕の涙をぬぐってくれたハンカチを思い出します。
薄いピンク色で、
柔らかくて、
不思議なくらい心地良い香りがしたあのハンカチを。

言葉が欲しいとき。
何も言わないで欲しいとき。
その見極めが難しいです。自分のことなのに（笑）。
あのとき、
慰めの言葉ではなく、
ハンカチで慰めることを選んだ彼女の優しさを、たまに思い出します。
自分は、そういう「無言の優しさ」を実践できるだろうか、と。

なんのために、
誰のために優しさを得ようとしているのか。
そういう疑問も浮かんできますが、
でも、大切な人が傷ついているときに、
「自分で立ち上がりなさい」と見守るのではなく、
かける言葉が見つからなくても、せめて、
そっと、
ハンカチを差し出せる人でありたいな、と思っています。