比嘉周作　ほろほろ写真館　　

山手線まで来て目的地は新宿。
いざ山手という段階で母が
「あ、新宿って書いてる。こっちこっち」
と自ら先行。
「？」
しかし俺には新宿の「し」の字も探せない。
線路まできて
「あれ？新宿って書いていたけどね〜？」
そう言いながら母親はそのまま山手線の電車へ。

そう、しっかりと遠回りの反時計周り。

この事実はそっと胸のうちに閉まっておこう。
着けばいいんだ着けば。


立ちっぱなしの可能性もあったが席があいた。

秋葉原に停車した際に母親が話しだした。
「秋葉原に保育園でピアノやっていた友達が住んでるよ秋葉原に」

「そうなんだ、萌えだね」

「で、それから都庁の仕事についてさ」

「ああ、都知事と趣味が合うな〜」

「元気かなぁ久しぶりに会いたいさ〜」


母親は萌えについてなんの反応も示さず、しかもなんの興味も持たず自分の話しを続ける。

残念だ。

カプコンのゲーム大会で予選を勝ち抜き、東京まで行った俺の「ゲームオタクならではの萌え」というトークは通じない。

基本一方通行のトークをする母親。

合間にスパンッと短めの台詞を入れるしかない。

だが、それでいい。

たまたま側にいるサラリーマンが笑えばいい。

見知らぬ東京の人が笑えば良い。

一方通行の母親を相手に俺のトークや演技は磨かれていくのだから。

理想はトーク番組。

司会をしながら、何人ものゲストと楽しく進行させていく。

予算を組んでの番組も良いけど、トーク中心で組み立てる原始的な構成は、司会やゲストがユニークで想像力があれば成り立つと思う。

もちろんディレクター＆カメラマンのセンス命だけども。

少ないカメラワークで表情やしぐさを捕らえるのはスキルや勘が必要だろう。

楽しいだろうなぁ。